ポコンティー畑で会いましょう - カタカタの素 -

大石さんという人がいます。仲良くしてあげて下さい。

プラークコントロール(真顔)

以前通っていた歯科でのことです。

新人さんと思わしき方が、時々指導を受けたりしながら助手をしていました。

それから数か月経った、ある日のことです。その方が私の治療を一人でする事になったのです。

声も小さく、まだ、ちょっと自信なさげな、でも真面目に取り組んでいる様子の方(女性)です。

 

私は治療用の椅子に横になり、椅子が倒されました。

次に、治療時に使用する、アームのついた頭上の照明が点灯させられる訳ですが、ここの歯科の照明は特別明るいらしく、照明を点灯させる前に、顔に布のようなものをいつも掛けてくれていました。

しかし、この日は突然照明が点灯し、自分でも驚くほどの速さで反射的に目をつぶっていました。参考画像として、太陽拳をくらった人の画像を載せられないのが残念です。

そのあと、投げる様にして顔に布がかぶさってきました。おそらく、順番を間違ったことに気がついて慌ててかぶせたのではないかと思っています。

 

次にあの、歯の治療に使う、あの先端が円錐状になっている道具を顔のところに持ってきました。

布がかぶせられているのに、なぜわかるのか、ですって?

それは次の瞬間、その治療具が下唇に落下したからです!

人は口を開けていると悲鳴が出ない事を知りました。

あの器具は、結構な重量があるようで、落下時に尖ってる部分から唇に当たったことも感触からわかりました。

人はあまりにも想定外のミスを起こすと、お詫びの言葉もとっさに出ない事も知りました。皮肉ではなくて、本当に驚いて、動揺したのだと思います。真面目そうな方でしたし。

ここから私は緊張したのか、全身がこわばっているのを感じながら治療を受けていたことを覚えています。

 

途中、「椅子を起こしますね」と言いながら下がって行った時には、これはつっこみを入れるべきなのだろうか、と思案すると同時に、この椅子の頭の方って、水平よりも下がるんだなあ、などと、どうでもいいことも考えていました。

繰り返しますが、この方はまだ初々しさが残る、真面目そうな方です。

 

最後に、歯の状態の説明を受けたのですが、

「なんやかんやの……こういう訳で、プラークがですね、あ、プラークというのはですねブフォォォッ!!笑」

と、何かわからないところで失笑していました。いや、私がわからないだけで、もしかすると、歯科関係者の間では鉄板ネタだったのかもしれません。

しつこい様ですが、この方はまだ初々しさが残る、真面目そうな方です。

 

帰りの車の中で、なんだか、私は悲しい生き物だなあ、と思ったのでした。